2023年に読んでよかった本2選

 今更ですが、2023年に読んだ本の中で、特に良かった本の覚書です。

 

ハケンアニメ』 辻村深月

あらすじ

「そのシーズンで一番のアニメを評して送られる【ハケンアニメ】の称号をかけ、天才監督と気鋭の監督の戦いが、今始まる」

 3章構造になっていて、章ごとに主役も切り替わってストーリーが展開していく。その場合、大抵は1人目の主人公の視点で①から⑩までストーリーを描いた後2人目の視点で再度同じ時系列を追うか、①から③はAさん、④から⑥はBさんというように時間ごとに視点を切り替えていくのが大半だと思う。だがこの小説は、1章は①だけ、2章は④から⑦、3章は⑨だけというように、時間を飛ばしつつキャラを変えながら描写している。今までそういった話を見てこなかったので、そこに大きな衝撃を受けた。また、登場キャラクターが魅力的なのも良かった。1章で登場した際は「この人少し嫌なキャラなのかな」と思っても、2章で大きく印象が変わってきたり、視点を変えることで登場キャラに奥行きが出ていてとてもおもしろかった。

 あと、これは余談だが私は3章が一番好きで、特に祭りの活気がある様子がひしひしと伝わってきて、その情景を勝手に妄想してものすごく感動していた。

 みんないい人で、最後まで気持ちよく読めてとても良かった。直前に『虐殺器官』(伊藤計劃)を読んでいたから、よりそう思った。

 実写映画も評判がいいらしいから、いつか見たい。



マネー・ボール』 J・ソール

あらすじ

「資金不足で、万年リーグ最下位をひた走るオークランド・アスレチックス。そこに現れたビリー・ビーンという男。他のチームから目を向けられないような落ちこぼれ選手とデータを駆使した、型破りで低コストな挑戦を追ったドキュメンタリー」

 今はセイバーメトリクスという名前で、野球にデータを活用しているが、その先駆けとなるような話だ。勝つために必要な能力を持ちながらも機会に恵まれない選手たちを安く買い、金持ち球団達に挑んでいく。

 本書では、球団を管理する立場だけでなく、選手に焦点を当てた章もある。特に気に入っているのはスコット・ハッテバーグだ。元々キャッチャーだったが、肘の手術を行い、そのままキャッチャーを続けるのが難しくなる。そんなときにアスレチックスから「一塁手やってね」と専門外の守備を任されることになった苦労人でもある。懸命に努力を重ね、とある章の重要な場面で大きな役割を担うことになる。誠実な人柄がいいし、390ページあたりのシーンは、私もつい嬉しくなった。

 その他で気に入っているのが、320ページに記載されている「はっきりと必要にせまられてしまったら、すでに手遅れ。条件が悪くても、呑まざるをえなくなる。」だ。先延ばしが癖になっている私には、ひどく心に響いてくる・・・

 あと、ビリー・ビーンが何者かは1章に書いてあるので、買って読んでみてください。

 

 2023年に買ってよかった本2選でした。

 

P.S.

 現時点で2024年一番の本は、『楽園のカンヴァス』(原田マハ著)です。